フジテレビジョン「ホンマでっか!?TV」に出演しました。

2011年8月20日
Chapter-354 宇宙がマルチバースかどうか確かめられるかも 

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 宇宙はたくさんあって、私たちが暮らすこの宇宙はその中の一つだという、マルチバースという考え方があります。マルチバースについては、Chapter-239で紹介しました。

 私達の宇宙は誕生の時にインフレーションと呼ばれる急激な膨張を起こしたとされています。このとき、インフレーションは宇宙全体で完全に均一に起きたわけではなくムラがありましたので、宇宙のムラになった部分で、さらにインフレーションが起きて、木からキノコが生えるように、宇宙から宇宙が生えてしまいました。インフレーション宇宙論ではこのような連鎖反応で独立した宇宙が無限個誕生したマルチバースが宇宙の正しい姿だとしています。

 ただ、私たちのこの宇宙以外に宇宙があることを証明する方法はこれまで発見されていませんでした。ところが今回、宇宙同士が衝突したときに生じる傷を探すコンピューターアルゴリズムの開発に成功したことによって、他にも宇宙があることを検証できそうなことが分かってきました。

 宇宙マイクロ波背景放射(CMB)は宇宙の全方向から地球に降り注いでいるわずかな熱です。130億年以上前の宇宙誕生直後の高温プラズマが放出した輝きが宇宙の膨張によって波長が引き延ばされ、マイクロ波に変化したものですが、現在は人工衛星の進化によってこのかすかな輝きを精密に測定することができるようになりました。 今回発明されたアルゴリズムというのは、この宇宙マイクロ波背景放射のデータを解析して、他の宇宙と衝突していたらこうなるはず、という証拠となるわずかな痕跡のような信号を統計学的解析に基づいて検出するアルゴリズムです。

 すでに、新たに開発したアルゴリズムによって既存のデータの解析が行われ、他の宇宙が存在することを示唆しているのではないかと考えられる結果も複数得られていますが、現在の宇宙マイクロ波背景放射のデータではまだ精度が不足していて断定はできないようです。

 宇宙マイクロ波背景放射の観測はNASAのCOBEが初めて観測し、WMAPによってより詳細なデータが得られましたが、研究者らが期待しているのは2009年に打ち上げられたESAの宇宙背景放射観測衛星「プランク」のデータです。WMAPのデータよりも解像度が3倍高いデータを得ることができる計画で現在観測中です。プランクによる全天の観測は2011年後半に終了し、その後、天体による時空のゆがみによるデータの誤差を計算して修正し、最終的なデータが得られるのは2013年1月の予定です。ただ、プランクデータを使ってもマルチバースの証拠だと確信できるかどうかはよくわからないそうで、たとえば、衝突が弱すぎて痕跡を検出できなかったり、衝突が複数回起きたために痕跡が複雑になって解析できなかったりする可能性が考えられます。

◇  ◇  ◇

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Chapter-335 見えないのに見えている可能性   
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Chapter-333 国際宇宙ステーションの日本モジュール「きぼう」からの小型衛星の放出実験について  
Chapter-332 小学生の大規模研究で英単語を処理する脳活動の基本パターンを解明  
Chapter-331 リチウム−空気電池  
Chapter-330 熊の冬眠に関する新発見・他  
Chapter-329 恐竜の前足と鳥の翼の関係   
Chapter-328 人の振り見て我が振り直せの科学  
Chapter-327 国際化学年  
Chapter-326 お茶の効能を分子レベルで解明  
Chapter-325 雷による反物質ビームの照射  
Chapter-324 デニソワ人、現生人類と交雑の可能性  
Chapter-323 新しいトランジスタを開発  
Chapter-322 正しい枕で正しい眠り  
Chapter-321 太陽系に関する近頃の発見  
Chapter-320 低い当選確率を高めに見積もるワクワク感  



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科学コミュニケーター 中西貴之(メール / 活動履歴
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独立行政法人理化学研究所
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ナビゲーター 中西貴之 obio@c-radio.net
 1965年生まれ
 島生まれの島育ち
 応用微生物学専攻
 現在化学メーカーの研究所勤務
 所属学会 日本質量分析学会 他
 日本科学技術ジャーナリスト会議会員

ナビゲーター BJ
 インターネット放送局くりらじ局長

 


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